PICK UP ACTRESS 吉田まどか
PHOTO=名児耶洋 INTERVIEW=斉藤貴志
初舞台「百瀬、こっちを向いて。」で
まっすぐに恋をするヒロイン役に
――舞台は初めてということで、稽古で映像での演技との違いは感じていますか？
「違いますね。まず、ずーっと役の状態でいて、止めて撮り直しとかないので。映像だと本番まで、台本をもらって家で1人で考える作業が多いんですけど、舞台では稽古から役者さんが揃っていて掛け合いもできるので、濃ゆいなーと思います」。
――舞台に興味はあったんですか？
「けっこう観に行ったりもしていて、出たいと思っていました。でも、まだ早いんだろうなと。舞台は生ものと言われていたり、お客さんの反応も直に見られるので、吉田まどかがやるのはまだ先かなと」。
――でも、「百瀬、こっちを向いて。」のヒロイン役のオファーが来て？
「演出の加藤（拓也）さんが何人かの役者さんと１対１でお会いして、そのなかで決めていただきました。私、福岡出身なんですね。『百瀬～』の舞台も福岡なので、『それで選んだ』と言われました(笑)」。
――それだけが理由ではないでしょうけど(笑)、その面接でまどかさんから何かアピールしたんですか？
「もともと『百瀬～』が映画になったのを観ていたので、その話をしたり。今度の舞台は映画より原作に忠実で、原作の空気を大切にしつつ、舞台ならではの表現があったりします。生演奏や生歌が入ったり」。
――しかし、百瀬のシチュエーションは辛いですよね。先輩の2番目の彼女で、つき合っていることを第1の彼女に隠すために、同級生とつき合っている振りをさせられるという。
「苦しいですよね。自分だったら、絶対耐えられない！ 本当に百瀬は強いなと思いました」。
――百瀬の心情について、いろいろ考えたんですか？
「考えました。最初は台本を読んで苦しいと思ったんですけど、読み進めていくうちに、先輩に対するまっすぐな気持ちも細かく見えてきて、百瀬のことをどんどん愛おしく感じました。好きな人のお願いなら、ウソをつくことにもまっすぐ向き合う。苦しさもあるのに、あんなにぶつかっていける百瀬は本当に愛おしいです」。
――宮崎先輩のことはどう思いました？
「『何してるの？』と思います(笑)。私なら絶対ムリ！ 吉田まどかとして見たら『男性失格！』と思っちゃうんですよね(笑)。だけど百瀬になって見ると、やることなすことカッコイイし、賢くて頭の回転も速いし、彼なりの考えややさしさもあって。宮崎先輩もまっすぐではあるんです。だから百瀬は好きなんだろうな……。でも、吉田まどかとしては許せない(笑)」。
――恋人の振りをするノボルくんは？
「うーん……。現実にいたら、恋愛対象にはならないと思います(笑)。私は男らしい人が好きなので。人間レベル（外見と精神の良し悪しを総合した点数）を作っちゃうような人はゴメンナサイ……ですね」。
――2人ともダメですか。厳しいですね(笑)。この取材日時点で稽古に入って1週間ぐらいですが、今のところ順調ですか？
「1ヵ所、苦戦しているところがあります。先輩と出会った状況をノボルに話す場面で、1人でポツポツしゃべるんですけど、当時の自分を客観的に見て話しているのに、先輩に出会ったときの感情になっちゃって」。
――なるほど。まどかさんはいろいろなことを掘り下げて考えるタイプとか？
「考えすぎて、どんどん迷子になってしまいます(笑)。本番までにはちゃんと抜け出すつもりですけど、今は迷子の真っ最中。いつも絶対に1回は迷子になるので」。
――ゴールに辿り着くために、必要な迷いなのかもしれませんね。発声とか仕草とか、舞台ならではの部分での戸惑いはありません？
「舞台って本当にひとつの動きで意味ができてしまうので、最初はひとつひとつに『ここは動いていいのかな？』『動いたら、どう思われちゃうんだろう？』と考えて、あまり動けなかったんです。でも、加藤さんが『こう動くことでこう見える』とか教えてくださるので、動きの意味を見つけてきています」。
――映像なら顔アップのシーンとかもありますけど、舞台は常に全身を見せていて。
「ちょっとした目の動きだけでも、意味を持ってしまいます。いろいろ試せるようになると、それが楽しくて、面白さもわかってきました」。
稽古で恋の気持ちを考えていたら
初恋の人が夢に出てきたんです(笑)
――こういう作品の稽古に入って、自分の高校時代を思い出したりもしますか？
「実は初恋の人が夢のなかに出てきたんですよ！」。
――おーっ。どんな初恋だったんですか？
「中学生のときですけど、地元の福岡で同級生の男の子にずっと片想いをしていました。私は美術部で、部活終わりに部室のカギを締めて1人で降りると、水飲み場で野球部の彼が水を飲んでいるところとすれ違って。その姿を見られただけで幸せで、『カッコイイなー』と思いながら帰ろうとしたら、『吉田さん、さようなら』と挨拶してくれたんです！ 『うわーっ!!』となって『さようなら』と言ったら、メールアドレスを聞かれたんですね。当時は携帯を持っていなくて『ごめんなさい』と言ったんですけど、うれしくて、そのまま家まで止まることなくダッシュで帰りました(笑)」。
――少女マンガの１シーンみたいじゃないですか。
「恥ずかしい……（照）。美術部では校内を自由に動いてスケッチもしましたけど、こっそり野球部が見えるところで描いていたりもしました(笑)」。
――で、夢はどんな感じだったんですか？
「恋愛しているときの気持ちって、年齢が上がるにつれて変わるじゃないですか。この舞台の稽古をしていて、学生の頃の恋の気持ちをずーっと考えていたからか、夢ではお互い中学生のままでした。特に話すこともなく、校舎で1日に何度もすれ違って、喜んでいる夢でした。次の日の稽古にもウキウキで来ちゃって……。私、何を話しているんだろう(笑)？」。
――それだけ役にのめり込んでいるんでしょうね。
「高校生のときは、あんな恋愛はしなかったけど、苦しい恋でも、したかった部分もありますね。フフフ(笑)」。
――実際のまどかさんは高校卒業から2年経って、当時と今で自分が変わったと思うところもあります？
「自己責任という部分が出てきました。10代も終わりに近づいて、年齢を言い訳にできないという自覚が出て。あと、着るものが変わりました。学生の頃は洋服にあまり関心がなくて、だいたい親の言うものを着ていたのが、親元を離れて自分で買ううちに、大人っぽい落ち着いた色の服を選ぶようになりました。無意識だったんですけど、クロゼットを見ると、いつの間にかなかの色がモノトーンになっていて」。
――高校を卒業してから始めたことはありません？
「始めたというか、ひとつ選択をしたことがありました。高校から上京して、芸能コースのある学校に通ったんですけど、もともとはデザイン科のあるところに行きたくて、大学も美大志望だったんです。でも、どの美大に行っても作品制作の時間があって、今のお仕事をしながらだと難しい。美大の方って、アルバイトもできないぐらいなので。それで学校で絵を学ぶ道は保留して、芸能一本で行くことにしました」。
――“イラストを描くこと”は今もプロフィールで趣味になっていますね。
「学ぶことは諦めても独学で、趣味になるのかな？ 自分の好きなように描いていこうと思っています」。
――インスタとかで上げてくれたらいいのにな、と思うんですが。
「SNSはやっていないんです。ツイッターもインスタも。そういうのに疎くて。でも、インスタで発表するのはいいですね」。
――あと、まどかさんは誰かに「こっちを向いて」と思うことはあります？
「友だちに、いるだけで周りを明るくする女性がいまして。呼んだらニコーッとしながら、こっちを向いてくれるんです。自分もうれしくなってニコニコがうつっちゃう。その人にはこれから5年後も10年後もずっと、素敵な笑顔のまま振り向いてほしいです」。
――最後に改めて今回の舞台ですが、自分ではどんなところが特に見どころだと思いますか？
「音楽チームも含めてユニークな方々が集まって、楽しく温かい空気のなか、熱心にいいものを作ろうとしています。オムニバスで『百瀬、こっちを向いて。』と『小梅が通る』の2本を上演して、どちらも恋愛小説が原作ですけど色が違うんですよね。別々の恋の気持ちを感じられて、絶対にお得だと思います。『胸がキュンとなるものを作ろう』ということで、稽古からみんな恋をしている気持ちで頑張っています(笑)」。
――観た人も初恋の人の夢を見られるかも？
「そのフレーズ、いただきます(笑)。学生の頃の気持ちを思い出して、初恋の人が夢に出てくるような舞台になると思うので、ぜひ劇場に観に来てください」。
吉田まどか（よしだ・まどか）
生年月日：1997年3月25日（19歳）
出身地：福岡県
血液型：不明
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2011年 の第7回「東宝シンデレラ」オーディションでファイナリスト。2012年に映画「ジョーカーゲーム」で女優デビュー。主な出演作はドラマ「夢王」（テレビ西日本）、「念力家族」（NHK Eテレ）、映画「学校の怪談 呪いの言霊」、「太陽の坐る場所」など。「radiko.jp」CMに出演中。初舞台「百瀬、こっちを向いて。／小梅が通る」（劇団た組。第11回公演）は11月9日（水）～13日（日）にLIVESTAGE hodgepodge（ほっぢポッヂ）にて上演。
詳しい情報は公式サイト
「劇団た組。」公式サイト
