FRESH ACTRESS 飯豊まりえ
PHOTO=古賀良郎 INTERVIEW=斉藤貴志
「MARS」でヒロインを熱演
恋する役に苦しさと胸キュンと
――高校卒業おめでとうございます。卒業式は涙でした?
「いろいろな思い出が溢れてきて、校歌を歌っているときに泣きそうになっちゃいました」。
――どんな思い出が?
「中学のときは普通に接してくれる友だちがあまりいなくて、お仕事もあって学校にちゃんと行ってなかったんです。それを直そうと勇気を振り絞って都内の高校に通ったら、学校がこんなに楽しいところだったとは。1年生のときの担任の先生がすごく熱いエネルギーを持った方で、何に対しても意欲が沸きました。勉強にも」。
――仕事との両立を頑張ったと。
「その先生に引っ張られて、自分が変われた気がします。私は何でも諦めがちで『仕方ない』で終わらせちゃう人間だったんです。1年生の前期で単位が足りなくて、2年生に進級できなさそうだったときも、ありがたいことにお仕事が順調だったから『仕方ないか』と思っていたら、放課後にたまたま先生と2人になって『俺は飯豊さんを進級させるから』とパッと言われて」。
「『そんな先生いない!』と思いました。そんなふうにひとつひとつ突き刺さる言葉をいただいて、自分の思考が変わってポジティブになれました」。
――それで進級が難しいところから挽回して。
「友だちも一緒にレポートをやってくれたり、支えてくれたので。卒業も危なかったんですけど、先生や友だち、それに両親やスケジュールを調整してくださったマネージャーさんにも恩返しというか、『ちゃんと卒業して、お仕事を見てもらう』と心に決めて、最後は本気で自分を追い込んで頑張りました」。
――仕事から夜中に帰宅した後に、睡眠時間を削って勉強したとか?
「そうですね。1ヵ月ぐらい、毎日泣きながらやってました(笑)。でも、『勉強も今しかできないことだから』と人に言われて。『お仕事が忙しくて卒業できませんでした』というのは簡単。それでも卒業することが大事なんだと、目が覚めました」。
――JKとしての思い出もできました?
「放課後にみんなで渋谷や原宿で遊んだりしましたよ。私、カラオケって嫌いだったんですけど、仲良しのイツメンが4人いて、他の3人のおかげでカラオケにも行くようになりました」。
――何を歌うんですか?
「昔の曲です。『タッチ』とかドリカムさんとか。すごく楽しかった。あと、テスト期間は12時で終わるので、私が代表で食べログをいっぱい検索して、おいしいごはんを食べに行ったり。1週間、毎日同じお店で同じ時間に同じメニューを頼んだこともあります」。
――どこの店で何を?
「大戸屋の真だらと野菜の黒酢あん定食です。意地で1週間食べました(笑)。1日目に一緒にわらび餅も頼んだら、メニューに出ていたのになくて。2日目もなくて、3日目も4日目も5日目もない。結局、そのお店のその時間帯にはわらび餅が切れてることがわかりましたけど、あえて頼んで店員さんに覚えてもらおうという、子どもの遊びみたいなことをしてました(笑)」。
「バリバリじゃないですけど(笑)、初めてまっすぐ人を好きになって一生懸命な女の子を演じて、『こんな感じなのか』と思いました」。
――どんな感じでした?
「苦しいんです! 撮影期間中、ずっと切なくて。マネージャーさんに久々に会うと『悲しそうな顔をしてる』と言われたり。だから『キラとしてちゃんと恋してるんだな』と思って、そういう意味では楽しかったです」。
――「MARS」はハッピーな恋愛ものでなく、修羅場続きで、恋敵にひどいいじめを受けたりもしました。
「辛かったですねー。途中で元カノも出てきちゃうし」。
――一方で、キュンとした場面もありました?
「たくさんありました。海辺のシーンはもう、すごかったですね(笑)。キスシーンで、イヤホンを片方ずつ聴くという昭和っぽい感じも『青春だな』と思って。イヤホンを耳にかけられて、『えっ?』となったらキス。それはト書きにあったわけでなく、現場で監督さんと相談しながらやりました。普通の人がやったら恥ずかしくなっちゃいますけど、サラッとやられる藤ヶ谷(太輔)さんがすごくて。私もナチュラルに集中できました」。
「ドライのときはちょっと緊張しました。皆さんがすごく真剣な顔をして、『こういう感じかな?』とやっていたので、私も無表情で頑張ってました(笑)。あと、目線に困りました。止まって『こうやってください』と言われたとき、藤ヶ谷さんの目を見たらいいのか、よくわからなくて下を向いたり、海を見てました。藤ヶ谷さんも『こうしたらきれいに見えるんじゃないか』と言ってくださって、みんなで『キラキラカットは大切に』という感じでした」。
――オンエアを自分で観たら?
「最初は『ヒャーッ!!』となって(笑)、第三者的には観られなかったです。8話のフラッシュバックのところで初めて客観的に観ました。『素敵だな。まさにキラキラカットだな』と思いましたね」。
――まりえさんの演じるキラはおとなしい子ですが、だんだん心を開いて、藤ヶ谷さんが演じる樫野零に「私と(死んだ)聖くんを重ねないで!」と激高するシーンもありました。
「キラちゃんに母性本能が出てきたんだと思います。樫野くんが心配で支えてあげたくて、笑ってくれることを一生懸命考えてる。『私だけを見てほしい』という気持ちは抑えていたんですけど、元カノのしおりちゃんの存在が大きくて。自分には入り込めない辛さが、あそこで出ちゃったんだと思います」。
――喫茶店で3人で会って、キラが零に「しおりさんを送っていってあげたら」と言ったのは、どう思いました?
「私も絶対ああ言ってしまいます。それで『なんで言ってしまったんだろう……』と後悔するタイプ(笑)。キラちゃんには『わかるなぁ。私もそうするなぁ』というところがすごくあって、感情移入しやすかったです」。
――他にはどういうところで共感を?
「8話で樫野くんにしおりちゃんを『送っていく』と言われたときも辛かったし。背中を見ながら、牧生くんが『零は泣けないんだ』と言って、そこは自由演技だったんですけど、別に泣くシーンでないのに泣いちゃいました。オンエアを観たら『樫野くんはいつ泣くのかな』と言って終わっていて、自由にやった部分がけっこう使われていたからビックリしました」。
――零みたいに危険な匂いのする人に惹かれるのも、わかります?
「いや、私は惹かれないです(笑)。クリーンな人が好きなんです。女の子の友だちが少ない人がいい。牧生くんみたいに陰で支えてくれるほうがキュンときます。『もう行かないで』と言われたら『わかった』ってなりますよね。キラちゃんは行っちゃいましたけど(笑)」。
スイッチを切り替えられて
泣くシーンも克服しました
――6月公開の映画版では、窪田正孝さんが演じる牧生もドラマとは違う顔を見せるみたいで。
「いやー、ビックリですよ! すごかったです。『こういう感じでくるのか』と。台本を読んで『ここはどう演じられるんだろう?』と思っていたら、そんな怖い感じに見えないのにものすごく怖い……みたいな」。
――もう試写は観たんですか?
「まだです。でも、撮影のときは毎日泣いていて。笑ってるシーンはあるのかな? カットがかかっても常に『へぇ~ん……』みたいな感じでした」。
「重かったです。ホテルに帰ったら、ズーンとなる前に寝ました。『早く次行こう!』と。でも、現場は楽しかったんです。差し入れもおいしかったし(笑)。カフェが来て『好きなだけ飲んで』とか。『外ロケで寒いからおみそ汁を入れよう』とか体にも気をつかっていただきました。だから、寒さも全然気にならなかったですね。激しいシーンもありましたけど、アドレナリンが出ていて痛みも感じないくらい、夢中になっていた撮影でした」。
――楽しい現場から泣き通しの撮影に、自然に切り替えられました?
「はい。でも、初めてでした。そういう切り替えができたのは。最初はまったくできなくて、だんだんスイッチを変えられるようになったので、自分が変わったんだと思います」。
――「あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。)」のときも「泣けなかった」という話でしたよね。
「あのときは壁にぶつかりました。最初に『泣けるところを10コほしい』と言われて、プレッシャーになっちゃって。いろいろ考えすぎて、反省もすごくありました。『それを克服したいです』と『MARS』の撮影に入る前に監督に相談したんです。自分がどうやったら泣けるかわからなくて、『撮る直前にキラちゃんの心情を念押ししてもらえますか?』とお願いしました。監督が無言でダーッと来て『樫野くんのことを守りたいけど言えなかった。樫野くん、ごめんね。もう終わりです』とか。それでボロボロ泣いたときに『はい、スタート!』とやってもらって、泣きました」。
――毎回その方法で?
「いきなり突き放されたりもしました。『はい、行くよ。泣いてね』とか。ひとつひとつに監督のこだわりやイメージがあったので、それにどんどん近づくようにやらせていただきました」。
――女優としてステップアップになったようですね。
「はい。短期間の撮影でしたけど、日常では絶対ない出来事が『MARS』ではあって。そういう体験をして『こういう感情にもなるんだ』って、いろいろ知れた作品でした」。
――スリリングな三角関係も役で経験して。
「私も一度、親友が好きだった男の子を好きになっちゃったことはあります。でも、その気持ちは抑えました」。
「しかも『私なんか』みたいなタイプなんです。本当に気が弱くて、『もっと行けば良かったな……』と後悔することが多いです」。
――普通に考えたら、まりえさんがアプローチしたら、たいていの男子はなびくんじゃないですか?
「そんなことないです。本当に心が折れます。オーディションでもそう。知り合いの子がいると『怖い……。帰りたい……』となっちゃいます」。
――じゃあ、親友の好きな人でなくても、三角関係は避けたいと?
「勝負ごとはイヤです。それなら、身を引きます。何でも『私はいいから。どうぞどうぞ』というタイプで、『もうちょっとプライドを持ちなさい』と言われますけど(笑)」。
――平和主義なんですね。理想のデートコースはありますか?
「大型スーパーに行って、お買い物をしたいです」。
――デートで?
「それで一緒にごはんを作ったり、お鍋をしたい。そういうのがいいです。あと、サプライズをしてもらいたいなぁ」。
――自分でもサプライズはします?
「もちろん! 家族とかにしてあげるのも好きです。母の誕生日に『おめでとう』も言わずに仕事に行って、ケーキや欲しかったものを全部買って、見つからないように運んで来て渡すとか。友だちにやったことがあるのは、その子の地元の駅のコインロッカーにプレゼントを入れておくという。普通に遊んで『プレゼントないんだ』と思わせておいて、別れるときに番号を『はい』って。友だちは全然遠いところに住んでいたんですけど、遊ぶ前に行って駅のコインロッカーに入れてから、会いました」。
――サプライズのためなら、手間暇をかけるんですね。
「そういうのを自分がされたことがないので、されてみたいです」。
「海外に行きたいですね。ケーキとかチョコレートとか、パティシエさんの作るキラキラした宝石みたいなものを、本場フランスに食べに行きたいです。『まれ』を撮影していたとき、パティシエさんに『バレンタインに人とカブらないオシャレなチョコレート屋さんを教えてください』と聞いたら、フランスから取り寄せる感じのを教えてもらったんです。それをあげたら、ビックリされました」。
――プレゼントにも力が入るんですね。自分でもチョコレートが好きで?
「甘いものは好きです。餃子も好きです。ラーメンも好きです。脂っこいものも好きです(笑)。食べることが大好きです」。
――なかでも一番好きなものは?
「えーっ? おそばかな? 納豆かな? 玉ねぎも好きです。玉ねぎは最強です!」。
――庶民的ですね(笑)。
「でも、一番と言ったら何だろう? 餃子も捨てがたいですよね。フォルムがたまらない(笑)。野菜多めがいいです。哀川翔さんがプロデュースした冷凍の『アニキ餃子』もおいしかった。餃子のサンプルのキーホルダーも持ってます(笑)」。
――では、半日ぐらい時間が空いたら、何をしますか?
「絶対おいしいものを食べに行きます! 食べログで調べて。おそば屋さんに行くかな。カウンターでも食べられます。たまに吉野家にも行きます。並のつゆだく、玉ねぎ多めで(笑)」。
――高校を卒業したら、大人の役もだんだん増えてきそう?
「できるかなぁ。OL役とか、先生役とか」。
――写真撮影では大人な表情も出てましたが。
「この前、オーディションで家庭を持って子どももいる役をやったときは楽しかったですでも、それを何ヵ月もやるのは大変だと思いました。やっぱり、まだ制服を着て戦ったりしたいです。血だらけになって、謎の女の子みたいな役をやりたいです(笑)」。
飯豊まりえ(いいとよ・まりえ)
生年月日:1998年1月5日(18歳)
出身地:千葉県
血液型:B型
【CHECK IT】
2008年に「avex kids×ニコ☆プチ公開モデルオーディション」でグランプリを受賞し、小学生向けファッション誌「ニコ☆プチ」(新潮社)にてモデルデビュー。その後、「nicola」(新潮社)から現在は「Seventeen」(集英社)と専属モデルを務める。女優として「世にも奇妙な物語」(フジテレビ系)「獣電戦隊キョウリュウジャー」(テレビ朝日系)、「学校のカイダン」(日本テレビ系)、「アルジャーノンに花束を」(フジテレビ系)、「まれ」(NHK)などの話題作に出演。「MARS~ただ、君を愛してる~」(日本テレビ/毎週土曜日24:55~)でヒロインの麻生キラ役で出演中。最終回が3月26日(土)に放送。映画版が6月18日(土)から全国公開。
詳しい情報は公式HPへ