舞台裏のプロフェッショナル 川上アキラ
INTERVIEW=井上朝夫
10年という区切りでも
あくまで平常運転?
――2018年はももクロ結成10周年の年。今まで10年続いてきたというところを聞きたいんだけど。川上アキラとしてももクロを始めた時に、ぶっちゃけここまで続ける、続く気概を持ってやっていたのか、すごく気になります。
川上「続けたいという気持ちはありましたよ。もともと始めた時にそういう展望で話してはいるんで。続くかどうかはわかんないけど(笑)」。
――あの時はAKB48とか会えるアイドル、握手が当たり前のアイドルがグッと上がってきていて、AKB劇場に観に行かれたりしてました。なんか面白いじゃんってところから始めたと思うんだけど、アイドルはその先にあるアーティストだったりモデルだったり女優までの過渡期、14歳くらいから17歳くらいまでだったよね。
川上「うちはジャニーズさんがお手本。これは結構いろんなところで言ってますけど。ジャニーズでありドリフターズさんでありとか。結局、母体としてのアイドルというのは続けていっていろんなことができるんではないかなって。それまでにいろいろグラビアとかもやってての自分なりの考えはありましたよね」。
――一番初めの大もとのところがAKB48の〝形〟としてのスタートじゃないんだよね?
川上「そう。だけどすげぇ参考にしてるし好きですよ。しっかり初めて〝アイドル〟を観たのはAKBさんの劇場だったりしたわけだから」。
――パフォーマンスをしっかり見せるということ。
川上「距離感とか」。
――近くでファンの方が感動してる様とか。
川上「そうそう。だからそれを観て常設が欲しいなと思ってたところ、あなたにラムラ飯田橋とか紹介してもらったわけじゃん。だからそれですよ。その解釈の仕方はどうだったのかわかんないですけど。俺なりの解釈になっちゃったんでしょうけど。握手会だってね」。
――初めはやってたもんね。
川上「やってますよ。あとは結構いろんなものをくっつけるとか」。
――いろいろやってた(笑)。何十枚、何百枚も買ってくれたファンの方は会議に参加できるとか。
川上「やってたやってた。距離を自分で構築して。もちろんいろいろ手探りだったけど」。
――今は運営側もシステマチックなところが多くなってるかも。
川上「そうですよ。うちは今でもそんなにシステマチックじゃないけどね」。
――それがスターダストのすごさで、ほんとに手前で作ってる感はある。他は完全に株式会社的な感じで、アイドルを取り巻く一定の雛形があって、〝このパッケージでいきますよ〟っていう形が多いからね。その雛形をそのまま海外にだって輸出できるような状態だし。
川上「すごいなと思いますよ」。
――この10年間、アイドルとともに、キーマンの方々と話をすることができてリアルに面白かったし、幸せだった。そういう意味では、ももクロが10年続いたということにものすごく敬意を払いたい。もちろんAKB48も続いてるわけだけど、メンバーが当たり前のごとく入れ替わる。その中で固定メンバーで10年経って、それで色あせてない。この状況を作ったあなたは本当にすごい。
川上「それ、メンバーですよ。俺なんて枠組みだけだから」。
――それこそ異端児、水着のグラビアアイドルを始めちゃったりね。あなたと長谷川ミネヒコは僕の中では〝この人たちはめちゃめちゃ頭が柔らかいな〟っていう面白さを感じていたわけですよ。
川上「でも、藤下はそのくらいやらせてくれる」。
――藤下さんはそういうところは放任だからね(笑)。僕もそんな上司が欲しかったなぁ……。だけど、川上アキラの柔軟な頭が10年持たせているのも理由のひとつかと。
川上「アイドルに対してこうであるっていう固定観念はないよね」。
――アイドルが好きな人がプロデュースしてたら絶対にダメだった気もする。普通に考えれば女性アイドルグループをジャニーズのように育てたいって言ったら、「無理無理!」となるもの。
川上「それであるところから女性も楽しめるような環境を作ってみようかとなっていくわけじゃないですか。女性エリアを作ったりとか。男性も」。
――男祭り・女祭り。
川上「そうそう」。
――子供祭り。
川上「子供祭りも」。
――今回は学生とか40越えとか(笑)。去年は「ぐーちょきぱーてぃー」をやったし……。幼い子供を持つファミリー層に向けてとか、普通のアイドルヲタクは全く考えない。
川上「やっぱり広げていくしかないから、向き合うっていうのは根本ですよ。それがやっとチームの中でもスタッフがお客さんに対してどこまで向き合えるかの環境作りであり、チケットっていうのも相当俺がどやすから、やるようになってきましたよね。だから、それはほっといてもああいう子供祭りの環境ができたりとかするようになってますもんね」。
――そう考えると次はメンバーの結婚とか恋愛っていうものが、女性アイドル男性アイドルに限らず、アイドルという事物に対してはものすごくポイントなわけじゃない?
川上「アイドルを疑似恋愛対象として考えるものなんだったらある程度のお客さんを減らすことになるんでしょうけど……障害にね。ただし、それに関してはうちは結婚してても、これは理想だからわかんないけど、長期展望でやりたいなとは思っているので結婚はあるでしょうね」。
――そこを崩せたら、そこがSMAPの木村さんみたいにああいうふうになったら……。
川上「なっていったらそれはすごい」。
――渦になる。
川上「やってみたいですよね。それは芸能マネージャーとしても過去にそういうことがないから」。
――今までにないものにどんどんチャレンジしていってた。結果論、その時は「くだらないことやってんなー」って思っても。だけど、よくよく考えてみたら全部が初とか。実際、なんだかんだ言っても、国立競技場で女性アイドルがライブをやるっていうことに関しても初なわけで。
川上「あの時はたまたまそうなっただけじゃないですか」。
――たしかに〝駆け込み〟とかそういう流れもあるけど。
川上「そうそう(笑)」。
――でも、いたるところに爪痕を残すんだよね(笑)。
川上「母体が小さいからかわかんないけど、ある程度つぎ込めるっていうか」。
――フットワークが軽いのかもしれない。自分のひと言で藤下さんが「ああ、いいよ」って言ってくれるから。
川上「そうそうそう。それはあるんじゃないですか。『ジェットコースターを作りてぇ』とかで作れるわけだから」。
――極寒のところでやりたいと言って軽井沢に行ったり。
川上「こいつに言ってもしょうがねぇなって思ってるんだろうけど、やってみたいじゃないですか」。
――はっきり言ってちょっと非常識じみてる部分もあるのかな?
川上「そうそう(笑)」。
――だけどそういう10年が過ぎて……。毎年同じことをやり続けているだけだと人ってやっぱり飽きは来るんだよね。新しいことをどんどん仕掛けていく、それも史上初だったり日本初だったり。そんな川上アキラがどう考えているのか? 10年目を迎える年を。
川上「10年は早いですよ。変わんないですもん。最近はこんなの始めてとか、10年ってことでいろんな人からよいしょよいしょされちゃうけど、自分としてはもう10年目も9年目も一緒ですよ。そこまで周年にとかこだわってなかったし。ネタで言ったりすることはあるけど」。
――予想してた答えが返ってきたかも(笑)。10周年はあくまでひとつの通過点と?
川上「望まれることはしたいとは思うけど、それ以外は特にお祭り騒ぎ的なことは考えてないかな」。
――なるほどね。ただ10年も経てば、彼女たちもおのずと歳を重ねていて……。今年作らせていただいたBirthday BOOKにも〝結婚観〟っていうキーワードを入れてインタビューさせていただきましたが……。
川上「だよね。結婚ねぇ……。自分が結婚してるからか結婚はいいと思うけど……結婚しない価値観もあるからさ、なんとも言えんけどなぁ」。
――でもタレントにしてみれば、結婚ってやっぱり一つの壁なわけじゃない?
川上「だね。する人もいて、しない人もいて。うちのグループでもそういうことが自然なんじゃねぇのかなぁと思うけどね。ただ、俺、プライベート出すのすげぇ嫌いなの。うちってすげぇ出してそうで実は全く出さないの。表向きはすげぇ真実を出してそうでファンタジーなの。俺の中での芸能って」。
――確かにそうかも。有安さんが大学に通ってるとか早めにニュースとして出せばいいのにそうしてないもんね。普通なら何々大学に行きましたとかそういうのをニュースにするじゃない。むしろ後付けだもんね。実はこうでしたっていう。「実は結婚してました」ってのが出たら笑うけどね(笑)。
川上「まあ、それはちゃんと伝えるんだろうけど。やっぱりそれはファンの人も知りたいだろうからさ。それを本人たちが売りにしたいって言うんだったらそれもそれで面白いよねとは思うけどね」。
――話が〝結婚〟に脱線しちゃったけど、10年目も新しいことにチャレンジしていく気概は?
川上「もちろんそれは……。準備をしてるし。予定的には本当に行えてるかわからないけど2年先ぐらいまで予定は立ててるし」。
――その中で言えることは?
川上「まだ言えないねぇ。いつ発表するかわからないけど××はやりたいよねぇ。周年はまあそれぐらいしかないけど」。
――最近は川上アキラツイッターでリアルタイムの動画も流してるじゃん。ああいうの取り入れるの早いよね。
川上「ああいうのは早いですよ。Ustreamを使い始めたりとか。根本はそうやって芸能でバリバリでやってるんだけど、既存のメディアに対してのアンチテーゼというか違う営業の仕方をしたかったっていうのがあったから。それはネットのUstreamでライブをそのまま、その権利関係に関してすごくキングレコードが寛容にしてくれた。作曲家さんとかいろいろいるんだけど、そういうところをクリアにしてUstreamでライブを流してみるとかそういうことをやらせてもらえる」。
――24時間放送もね。
川上「そうそう」。
――画期的だよね。夜、観てたらフルちゃん(古屋智美マネージャー)とかが出てきてトークしてんだよ。あり得ないよ。朝方になったらあなたたちが出てきて、藤下さんが仮面舞踏会みたいなのをつけてさ(笑)。「なんだこの会社は?」って。
川上「それを楽しんでる土壌は作ってきてたと思うから(笑)」。
――今はフェスにアイドルグループが当たり前に出る時代になったけど、ぶっちゃけももクロが「このフェスに出るの?」って頭をかしげるようなフェスに出てたよね。アニソンフェスとか。2011年。異業種ですよ。
川上「勉強になりましたよね。アニメとっていうのは。近くて近くないというか」。
――3次元と2次元はなかなかね……。
川上「わかんないからさ。でも少しでも声援が増えていくからさ。アニサマとかで。あれは楽しいっすよね。アウェーだアウェーだって言われるけど」。
摩耗するアイドルたち
差別化を図った方向性
――今、アイドルには消費と摩耗っていうのがあると思う。
川上「するでしょ。どこも摩耗はしてるよね。そういうのって、芸能の仕事を長年してるとわかるよね。人だからさ」。
――ももクロの場合、10年ってサクッと言ってしまうけど、摩耗してないよね。いっつも元気だもん(笑)。
川上「本人たちが頑張ってくれてるからですよ。摩耗しないようにはするよ」。
――仕事の数がももクロって売れてる絶頂期でもセーブしていた気がする。あなたが連絡がつかないっていうのもあるんだけど。意図的に電話が通じないようにして。
川上「違う。やってんだって! うちらからしたら限界なんだよ。限界でもないけど……。いや、だからそこまでやるとああって。それはわかるの」。
――しどろもどろだな。摩耗っていう一つのキーワード。そこを実はよくわかって、そうしていたのでは? 摩耗って結局、タレントだけじゃなくて一般人にも絶対に言えるから。
川上「もちろんそうだと思いますよ。あなたも一度疲れちゃったわけだもんね」。
――そうそう。僕なんか楽しいことをやりたいだけだったんだけど、企業体の中に身を置いてしまうとそうはいかないわけで。今は無料サイトを軸に応援したい子を応援する。それで、ユーザーの方に喜んでもらえれば超ラッキー。
川上「でも逆にその気持ちでやってると閲覧数が増えて広告がつくわけでしょ。だからうちも一緒だって。ビジネスモデルとしては。目先の何かをっていうのはあるところからまったくしてないよね」。
――その理念みたいなもので10年続いた。素敵だよね。いつも「なんでももクロってこんなに現場が楽しいんだろう?」っていうのは、そういうところからなんだろうな。
川上「それに賛同してくれるし、そうじゃなかったら来てくれた人が気持ちよくないもん。それはずっと教えてきたし……。人だし、本当に根本、お客さんを楽しませるとか、人を笑顔にするとか。あるところまでは物理的な『国立を満杯にしたい』とか『国立でやりたい』とかやってたじゃん。でも、そんなのある程度限られてくる、もっとデカいことをやりたくなってくる。それでリーダーと話してたら、あいつが俺たちの指針になるような笑顔で天下を取りたいみたいに、それにメンバーもっていう感じだよね。綺麗事なんだけどそんなに利益を出せとか言われないし、会社にいさせてもらってるし」。
――なんでもそうだけど、どこかに行くと目的とか目標がわかんなくなる時ってあると思う。でも目の前のモノノフさんたちが楽しんでくれればいいじゃんって、実はそれって新人のアイドルの子たちにも言いたいことなんだけど、目の前にいる1人でも100人でも、その前にいる人たちを喜ばせようよっていうことじゃん。
川上「物理的な目標がなくなって面白くなくなったとか言われてもそれは別にいいと思う。しょうがないもん。俺はそっちに舵を切ったわけ。うちの5人はそれを楽しんでくれる。だから今、一日署長とかよくやったりしてるけどさ」。
――署長もそうだけど駅長もね(笑)。
川上「ああいうのもそうよ」。
――駅名を変えさせて駅長をさせるっていうそれも笑えるよね。
川上「新しいのかな?」。
――あんまり見たことはないよ。駅名まで変えてるわけで(笑)。
川上「よく『どこに話したらいいのかわからない』って話を聞くけど、全然他のマネージャーさんたちもできると思うよ。面白いよ」。
――頭が柔らかくなくなっちゃうんだよ。
川上「それはあるんだろうね。だからうちの社風でありっていうことなんじゃないですか」。
――春の一大事も富士見というところから始まって、それを募集してしまう。来年の開催候補地も下見に行ったんでしょ?
川上「昨日、見に行ったんだよ」。
――11月冒頭に公開するこのインタビューで言えることは?
川上「まだ言えないと思うんだけど、たぶん××になると思うけどね。柔らかい自治体さんだと首長も頭が柔らかくてやりやすいですよね。だからそれでこっちでいろいろなことを協力するからタレントのバリューを使って人を呼んでくださいよ。そういうふうにしてお互いWin-Winにはなったと思ってるから。そういうのっていいじゃないですか」。
――そうだよね。富士見市の普通のだだっ広い運動公園がとんでもないイベント会場になっちゃうんだから。
川上「あれ、普通のグラウンドだもん。それって面白いじゃない」。
――面白いっていうか、富士見市からしても素敵なことだよね。
川上「2万人規模のね。もちろんうちを楽しいと思ってくれる人たちがいてのことだけどね。××って書かないでね。書けないんだよ、これ」。
――了解。あとは〝屋根のあるところ〟としか書けない。
川上「(笑)。11月だと言えないのよね。11月中くらいに決まって年末だと思ってるから」。
――そのぐらいに何か発表できるよと。プラス10周年ということで他に何かやりたいことがあるのか。
川上「来年また一度もチャレンジしてないような何かをやりたいよね。それは××というか××なんだけどさ。もちろん準備してて……」。
――それも書けないよね?
川上「書けないね」。
――でもそういう新しいことはあるんだね。
川上「今、小さいところでツアーをやってるけど、ああいうのも楽しいしさ。だから振り幅だよね」。
――自分たちが楽しんで、さらに目の前にいる人たちを楽しませる。それは人数関係なくっていうね。
HUSTLE PRESSで
ビジュアルを発信し続けよう!
――いろんな現場でモノノフさんに会った時によく言われるのが、「今、ビジュアルをちゃんと撮ってくれるのはHUSTLE PRESSさんぐらいだから」という言葉。それはあなたが他に撮らせないから(笑)。
川上「みんな言ってこなくなったもんね。よかった。よかったんだか(笑)」。
――電話に出ないからだって。
川上「違いますよ。電話には出てますよ」。
――もっと電話に出ようよ! そうそう。最後にもう一つ。今年作らせていただいたBirthday BOOK 。来年のBirthday BOOKに10周年だから一つ入れたい企画が。
川上「なに?」。
――10周年の年でもあるから「川上アキラと、」という、メンバーとあなたの対談。
川上「そんなのネタで放送でやってるくらいでいいって。そんなに望まれてないって」。
――編集側の人間として、10周年という年に形として残したい。今年のBirthday BOOKではメンバーのリレー対談だったけど、その部分に川上アキラと各メンバーの対談を入れたい。
川上「そんなに言うことないよー。特には」。
――10年を振り返る、10年の回顧録。
川上「1回考えます。藤下リョウジとかいいんじゃないかな?」。
――いや、あなたじゃなきゃダメ。それを来年、2018年のBirthday BOOKの中の一つの企画として入れたい。
川上「考えますけど、ちょっと待って。あなたそういうところ押し強いから(笑)」。
――グラビアとかライブレポートも!
川上「全然いいですよ」。
――うそばっか。スケジュール出してくれないじゃん。
川上「出しますって。いいですよ。じゃあ、玉さんから。×月×日でどうよ。玉さんをきれいに撮ってあげてくださいよ」。
――まかせてちょうだい!
川上アキラ(かわかみ・あきら)
生年月日:1974年9月10日
出身地:埼玉県
【CHECK IT】
スターダストプロモーション所属のマネージャー、プロデューサー。1998年入社。芸能3部にて、沢尻エリカ、早見あかり、ももいろクローバーZ、3B juniorなどを担当。2013年に役員に就任。テレ朝動画にて、毎週月曜日に「川上アキラの人のふんどしでひとりふんどし」を担当。