PICK UP ACTRESS 松風理咲
PHOTO=名児耶洋 INTERVIEW=斉藤貴志
初主演映画「トモシビ」が5月公開
銚子電鉄と競争する多感な高校生役
――「トモシビ」で初めて主演として映画を1本撮りましたが、現場はどうでした?
「『自分が話さないといけない。盛り上げないといけない』と思ったんですけど、結局できなくて(笑)。先輩の大人の方から話してもらうことが多かったです」。
――でも、いわゆる座長としての意識はあって?
「そうですね。でも何を話したらいいかわからないし、人見知りも出てしまい、全然でした(笑)」。
――台詞の量も多かったですよね?
「そんなにすごく多いとは感じませんでした。覚えることはあまり苦ではないので」。
――さすが。では、演じる面での大変さはそんなになくて?
「銚子電鉄の映画で、電車内で撮るのは結構大変でした。もともとあまり本数が走ってなくて、撮影できる回数が限られていたので、すごく緊張して。でも、地元の方々にも参加していただいて、楽しく撮影できました」。
――この「トモシビ」は、いろいろな要素が詰まった映画ですよね?
「そうですね。いろいろな人の物語があって」。
――理咲さんが演じた杏子も、地元愛、恋、友だち、親……といろいろなことに直面して。「こういう気持ちになったことがある」という部分はありました?
「親に対して言いたいことを素直に言えないところは自分に似てると、すごく思いました。友だちに話しても親には話さない、ということはあります」。
――反抗期的にぶつかる以前に会話が少ない、みたいな?
「私が人とあまり話さないので。家でも姉はよくしゃべるんですけど、私はテンションが上がったり、気分がめちゃくちゃいいとき以外は、自分からは基本しゃべりません(笑)。上京してからも、お母さんが電話してきたら『なに?』みたいな感じなので、それで怒られたりしますね(笑)」。
――杏子は親友と恋絡みでギクシャクしました。
「そういう経験は私はなかったんですけど、中学のときは女子対男子のケンカみたいなのは、しょっちゅうしてました。男の子って、人の気持ちを考えずに何でも言っちゃうんですよ。『太ったね』とか『裏表があるね』とか。そういうところでバチバチはしました(笑)」。
――杏子みたいに諦めないで何かに取り組んだことは?
「ありますね。自分が『負けた』と思いたくないんです。人よりできないところは見せたくなくて。何をするにしても、ある程度まではできるようになりたい。すっごくできるまではいかなくても。『姉に負けたくない!』というのが結構ありました」。
――習いごととかで?
「そうですね。だいたい姉が先に始めたので『追い付きたい!』という気持ちが強くて。ピアノも2人で習っていて、姉は中学に入ってから勉強をすごくやるようになったので、自分はその分、合唱コンクールの伴奏をやったりして頑張りました」。
――お姉さんに負けないように、夜中まで練習したりも?
「家が住宅街にあるので、9時以降は弾いたらダメと言われていて、そのギリギリまでやってました。あと、家族がテレビを観ているのに、同じリビングでピアノを弾いて、よく怒られました(笑)。でも、母も姉も歌うことが好きで。母はもともと合唱団で歌っていて、姉は学校で指揮者をやっていたから、テレビを観ているときでなければ、私が弾いていると歌ってきたり。そういうのは楽しかったです」。
――全体的に、杏子は理咲さんと重なる面は多いと感じました?
「結構ありました。でも、性格的にはどうですかね? 杏子は明るくて、まっすぐな子だなと思いました。周りの人の恋心とかには鈍感ですけど、そういうことを気にしないくらいまっすぐで。私はそんなにまっすぐではないと思います(笑)」。
――杏子がお母さんの同級生だった運転士に怒りをぶつける場面がありましたが、理咲さんはあまり怒るイメージがありませんでした。
「あそこまでストレートにガーッとは言わないです。杏子もあまり自分の気持ちを人に言わないので、たぶんそういうのが溜まっていて、その分、強く言ってしまったんだと思いました」。
――この映画は高校生たちが駅伝で銚子電鉄と競争するイベントが軸になっていますが、理咲さんは走るほうは?
「中学や小学校のときはテニスをやっていたので走り慣れていたんですけど、これを撮ったときは全然動いてなくて(笑)、練習で走りに行ったりしました。フォームもきれいではなかったので、直しながら。『腕の振り方がヘン』と言われたんです。自分ではわからなかったんですけど、ちゃんと腕を振るようにしました」。
――走るシーンは軽やかでしたね。
「杏子が走ったのは折り返し地点の銚子駅近辺で、行きと帰りで何回か撮りました。そんなにキツくはなかったです。エキストラさんが実際に走っているときも応援してくれて、すごく励みになりました」。
――自分ではどの辺のシーンが特にお気に入りですか?
「自分が出ているところだと、やっぱり走るシーンですね。電車と一緒に走っていた場面もあって、ちょうどきれいに人と電車が合わさってました。自然のなかを応援されながら走って、託されたネックレスも持っていたり、いろいろな想いを背負っていて。そこは撮っていても楽しかったし、映画で観ても『いいなー』と思いました」。
――幼なじみの片瀬くんとの夜の海のシーンも良かったです。
「あそこは波音がすごく強くて、引き潮で流されるくらいで、声を張らないといけなかったんです。それが難しかったんですけど、すごくきれいな場所でした」。
――自分で観ても満足のいく初主演作になりました?
「自分が出ていないキミエさん(植田真梨恵)と熊神さん(前野朋哉)のシーンとかは、初めて観て楽しめました。でも、自分のところは『ダメだな……』と思って……」。
――反省点もあると。
「いや、もう反省ばかりです。最初からガチガチで。あの電車に乗るシーンは『2回撮れる』と言われていたんです。でも、1回目はドアが開かなくて乗れなくて、『あと1回しか撮れない』となったら、『台詞を間違えたらいけない』『歩くところを間違えたらダメだ』とか、そういうことばかり考えてしまって……」。
――観る分には全然自然でしたけど。銚子電鉄に乗った印象は?
「やっぱりゆっくり進んで、景色もきれいでした。東京の電車だとビルしか見えなかったりするので、景色を眺めながら木の間を進んでいくのは、本当に良いなと思いました」。
――銚子の街も居心地が良い感じでした?
「時間がゆったり進んでいる感じがしました。東京だと本当に時間に追われていて、駅のホームとかでもみんな歩くのが速いじゃないですか。銚子では誰も急ぐわけではなく、ゆったりしていて、たまに猫が歩いていて。『のどかだな』と思って快適でした」。
いろいろな作品をやって課題も出て
もっと感情の振れ幅を広げたいです
――それから、松山を舞台にしたウェブムービー「恋茶の作法」も配信されていますが、そちらで演じている陽子は男の子っぽい女の子ですね。
「そうですね。お姉ちゃんも元気で影響されて、本当に明るい子でした」。
――幼なじみの利休くんに「シャキッとしろよ!」と言ったり。普段の理咲さんが使わない言葉ですか?
「私、あまり人にアドバイスとかできないんです。後輩には言えますけど。勉強も先生に『人に教えることで自分の身に付くから』と聞いたから、『教えて』と言われたら教える感じです。でも利休くんはあまりにじれったいというか、言いたいことを全然言わないから、結構自然に言えました」。
――お茶の点て方は練習したんですか?
「撮影の前日くらいに先生に教えてもらいました。もともと私の祖母がお茶をやっていて、私もやったことがあったので、ちょっと覚えていました。役的にヘタにやらないといけないので、なるべく手をオーバーに大きく動かすことを意識しました」。
――事務所の先輩の知英さんの飼い猫のレオンとも共演しました。
「初めて動物と一緒に演技しましたけど、レオンも現場慣れしてなかったから、会話をしていると自分で思い込みました。レオンがあっちを向いていても、こっちを見ているつもりで」。
――理咲さんも猫を飼っていたんですよね?
「はい。レオンはルーティンで寝る時間が決まっているみたいで、撮影の途中で寝ちゃったんですね。そのシーンも使われましたけど、そのときに撫で撫でしたりしました。私も初めて猫を飼ったときは『噛まれるんじゃないか』とか心配だったんですけど、飼っていた分、慣れていて。噛まれても痛くないし、『猫はここを撫でられるのが好き』とか知っているから、すぐ仲良くなりました。たぶんレオンは『何でこんなところに来てるんだろう?』と思っていたでしょうけど(笑)」。
――御茶会のシーンでは着物姿でした。めったにない機会だったのでは?
「半年くらい前に、いとこの結婚式で着ました。祖母も母も着物をたくさん持っていて、いろいろなときに着させてもらうんです。お正月はよく着ます。花火大会で浴衣を着たりもしました」。
――じゃあ、若いわりに着慣れていて?
「そうですね。でも、着物は小股で歩かないといけないのに、私は大股で歩いちゃって」。
――着物だと自然に小股になりません?
「なるんですけど、そうすると進むのが遅くなって、じれったくて(笑)」。
――4月から高2になりましたが、高校生活のほうも楽しんでます?
「はい。原宿や渋谷に行ったことがなかったんですけど、友だちに連れて行ってもらって、おいしいお店を教わったりしました。原宿にタピオカジュースのお店があって、私の学校で流行っていて、みんないるんですけど、学校帰りや行事終わりに行ってます。そこはたまり場みたいになっていて、すごく通ってました」。
――本当に東京のJKらしいですね。渋谷でオシャレな服を買ったりも?
「私、あまり服を買わないので、そういうお店はすごく苦手です。入っても一瞬で出ます(笑)。必ず『どうですか?』みたいに声を掛けられるじゃないですか。それがダメで、イヤホンして入るんです。1人で静かに見たいんですね。『何かあったら、こちらから聞きますから』と思って」。
――どこの店でも、そんな感じ?
「デパートとかなら普通の声で話し掛けられますけど、高い声で『いかがですか~』みたいに言われるのが苦手なんです(笑)」。
――仕事も学校もない日は、どんなことをしてます?
「家にいます。基本インドアで、全然外に出ません。出るとしたら1日決めて、その日に全部済まします。映画を何本か一気に観て、ついでに学用品も買って……ということが多いです。家では本を読んだりテレビを観ながら、特に何をするわけでもなく、ダラダラしています(笑)」。
――女優の仕事はより面白くなってきました?
「いろいろな作品をやっているうちに、自分のなかで『もっとこうしたい』というのが出てきました。今は感情の振れ幅が小さくて、『恋茶の作法』ではすごく元気な子の役だったのに、お姉ちゃんのテンションの高さに負けちゃったところがあって……。もっとテンションの上がるときと下がるときの幅を広げられたらいいなと思います」。
――自己分析して課題を見つけているんですね。
「私は声もトーンが一定で低いというか、あまり高い声を出さないんです。だから、本を読んでいるときになるべくトーンを上げたり、台詞に盛り上げる部分を付けたり、そういうことを日ごろからしているところです」。
松風理咲(まつかぜ・りさき)
生年月日:2001年1月17日(16歳)
出身地:岐阜県
血液型:B型
【CHECK IT】
2015年10月に「東京メトロFind my Tokyo.『私を惹きつける池袋』篇」CMでデビュー。2016年4月に「グッドパートナー 無敵の弁護士」(テレビ朝日系)でドラマデビュー。2016年にネスレ「キットカット」の6代目受験生応援キャラクターに就任。主演するネットムービー「恋茶の作法」<https://nestle.jp/brand/kit/koimatcha/koicha/>(ネスレシアター)が公開中。初主演映画「トモシビ 銚子電鉄6.4kmの軌跡」が5月20日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー(イオンシネマ銚子、イオンシネマ幕張新都心で先行ロードショー)。
詳しい情報は公式HPへ