2016年に光った深夜ドラマ

美女4人のゲスな本音トークがさく裂
「ラブラブエイリアン」が残した爪痕

 もはや仕事のためか趣味なのか自分でもわからなくなっているが、10数年来、放送される連ドラは基本すべて観ている。観続けるのが辛くなる作品でも最後まで頑張る(何のために?)。それで時にはドラマ評をメディアで書かせてもらったり。
 そんな芸能ライターの端くれとして、去年の連ドラの個人的ベスト5を挙げさせてもらうと、①ラブラブエイリアン(フジテレビほか)②いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう(フジテレビ系)③こえ恋(テレビ東京ほか)④グッドモーニング・コール(フジテレビ)⑤99.9-刑事専門弁護士-(TBS系)となる。深夜ドラマが3本。
 1位の「ラブラブエイリアン」はとにかくブッ飛んでいた。メインキャストは新木優子、森絵梨佳、太田莉菜、久松郁実というモデル系美人女優4人。フードコーディネーターの園美(新木)の部屋に突然、手のひらサイズの宇宙人2人が不時着。驚異の科学力を持ち、地球を20分で滅ぼすこともできる彼らだが、宇宙船の修復が終わるまで園美の部屋に居候することに。
 その宇宙人に「地球人は本当に醜い」と言われながら、4人の本音のゲストークがさく裂していた。1話から「いいんですか? 彼氏のことを“チンコみたいな顔”って言われて」「ゆるふわパーマだけで男は釣れない。エサがないと」「これぞ“ヤリ逃げしてください”ってファッションだよ」などなど。
 4人が合コンする回では、宇宙人が地球人のオスとメスの行動を研究しようと、部屋からモニターで観察。「始まって10分、ウソしか言ってない」と本心を表示すると、「さっきから体ばっかり見てやがる。死ねよクズ!」などと心の声が露わに。さらに本音を話す光線を飛ばしたら、「今日ヤラせるヤツだけ残れ!」という男に、優秀な検事だがプライベートはだらしないサツキ(太田)が「てめえらのレベルで簡単に女抱けると思うな! やさしくて生活力のある男しか、タダで女とヤレないシステムになってるんだよ!」と爆発。
 そのくせサツキは「ヤラせるヤツだけ」と言った男とつき合い始め、「どうなった?」と聞かれると「2回ヤッたよ。アソコもなめた。なめるくらいの気合い見せたっていいでしょう?」と。いやはや。このフレッシュガールサイトで書くのがはばかられる会話の応酬だが、実際の台詞の引用だから仕方ないんスよ、編集長。
 ヤンキー口調の美容師・由日子(森)はどギツイ毒舌を連発し、合コン好きの歯科衛生士・チズル(久松)はキレると怖い。園美は常識人だが、ポロッと「妊娠したくないならゴム付けてヤレばいい」などと言ってドキッとさせる。劇中ではエロ話だけではなく、中国事情について意見を聞かれた宇宙人が「地球人は考えすぎです。疑心暗鬼になる前に直接対話すべきです」と答え、男女間のいざこざについても同じ発言をしたりと、何気に深みもあったが。
 いずれにせよ、この「ラブラブエイリアン」でのむき出しの本音と比べたら、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)などプライムタイムの恋愛ドラマは、建前だらけのおままごとに見えてしまう。それほどの突っ走り方が痛快だった。何かと締め付けが厳しい風潮の昨今、深夜とはいえ、よくこんな刺激的なドラマが作れたものだ。しかも、新木優子ら美形ステイタスの高い4人を使って。
 

低迷するプライムタイムに
活用できるカギはあるか?

 一方、「こえ恋」や「グッドモーニング・コール」は、プライムタイムではめっきり減った学園モノ。「こえ恋」は永野芽郁、大友花恋、唐田えりか、水谷果穂と旬の美少女を揃え、ジュブナイル感にときめいた。「グッドモーニング・コール」は福原遥が主演。子役時代の“まいんちゃん”からすっかり美少女に成長した福原を、コメディエンヌぶりも含めてたっぷり堪能できた。若者のテレビ離れからドラマがどんどん大人向けになるなか、深夜に良質の学園青春ドラマが息づいているのは救いだ(と、大人が言うのもナンだが)。
 ちなみに、去年の民放連ドラの平均視聴率ランキングは①ドクターX~外科医・大門未知子~(テレビ朝日系)21.49%②99.9-刑事専門弁護士-(TBS系)17.12%③相棒season15(テレビ朝日系)14.64%=9話まで④相棒season14(テレビ朝日系)14.57%=10話から最終回⑤逃げるは恥だが役に立つ(TBS系)14.47%⑥世界一難しい恋(日本テレビ系)12.83%となるようだ。視聴率12%台など、ひと昔前なら失敗と言われたが、今はヒット作。半数以上のドラマが2ケタにも届かず、「消費税(8%)を越えたら合格」なんて話も。
 そんななかで面白かった深夜ドラマたち。「ラブラブエイリアン」は革新的で、「こえ恋」や「グッドモーング・コール」は1周回って新しかった。もちろん深夜に観るから面白かった面は大きいし、元が配信ドラマの「グッドモーニング・コール」以外はそもそも30分枠。そのままプライムタイムに持ってきても、うまくいくわけではない。
 ただ、どうせドラマが停滞しているなら、プライムタイムでも思い切って常識を覆す挑戦をしてもいいのではと、イチ視聴者としては思う。特に、1年で1本も平均10%に届かなかったフジテレビ。深夜で「ラブラブエイリアン」のようなドラマを作ったエネルギーを、プライムに持ってこられないものだろうか。
 ところで「ラブラブエイリアン」では、「あの精子が濃そうな奴?」「飛ばしそうだったもん」「ウカウカしてたら着床させられちゃうぞ」といった女子トークに、宇宙人が「下品なのでは?」と尋ねると、森絵梨佳の扮する由日子が「地球に住んでる女は全員、これくらいの話、してるから」と返す場面もあった。本当にそうなのか? 自分の彼女には怖くて聞けない。

 
 

ライター・旅人 斉藤貴志